とりあえず1ページ漫画から描き始めたいけど
具体的に何からすればいいのかなあ
漫画を描いてみたいけど、最初はどうにもこうにも手が動きませんよね。そこで、今回は1ページ漫画作り方の手順をまとめていきたいと思います!
いつか漫画を描きたいなら、今から描け!
「いつか漫画を描いてみたいけど、絵が下手だからもう少し練習してからじゃないとね、、、」と弱気になっている方に声を大にして言いたいのは、漫画を描くことこそが絵の上達の近道になるということです。
『漫画力を身につける方法』という記事で詳しく解説していますが、漫画を描くには「画力」ではなく「漫画力」が必要で、それは漫画を描くことでしか、なかなか身につけられない力です。
「画力」は漫画を描いていく中でどんどん高まるので、いつか漫画を描きたいと思っているのなら、今から一緒に始めましょう!
1ページ漫画と通常漫画との違い
通常の漫画と1ページ漫画にはいくつかの主な違いがあります。以下に、その違いをいくつか挙げてみましょう。
形式と長さ
通常の漫画は、複数のページにまたがることが一般的で、章やエピソードに分かれています。対照的に、1ページ漫画は一つのページにまとめられ、短編の形式をとります。
ストーリーの焦点
通常の漫画は複雑で長いストーリーを展開することが一般的です。登場人物の成長や複数のプロットが絡むことがあります。対照的に、1ページ漫画は非常に簡潔で、一つのメッセージやシチュエーションに焦点を当てたものが多いです。
登場人物の紹介
通常の漫画では、登場人物の背景や関係性を詳しく描くことがあります。1ページ漫画は制限された空間の中で完結するため、登場人物の背景や関係性を簡潔に表現する必要があります。
ページの構成
通常の漫画は、ページごとに複数のコマが配置され、場面の変化や時間の経過を表現します。一方で、1ページ漫画は1つの絵で構成され、視覚的に分かりやすいシンプルな構成が特徴です。
リーダーシップの要素
通常の漫画は読者を次のページに引き込むためにクリフハンガーやサスペンスを多用しますが、1ページ漫画は短いため、一瞬でメッセージを伝えることが求められます。
ユーモアや驚き
1ページ漫画はしばしば短いジョークや驚き、ユーモアを取り入れることがあります。読者が一瞬で理解できるような要素が重要です。
1ページ漫画の特徴から考えるおすすめジャンル
1ページ漫画は短編の形式であるため、簡潔で効果的にメッセージを伝えることが求められます。以下は、1ページ漫画に適したジャンルの一例です。
これらのジャンルは1ページ漫画に適していますが、もちろんアイデアやスタイルによって他のジャンルも考えられます。短いが故に独自の面白さがある1ページ漫画は、表現の幅が広いため、様々なアプローチで楽しむことができます。
- ギャグ
1ページに収めやすく、簡潔な形式が笑いを生むのに適しています。シンプルで効果的なギャグやオチが特徴です。
- シュールコメディ
常識をひっくり返すような奇抜でシュールなコンセプトが1ページ漫画に適しています。
- 日常
普段の生活や日常の一瞬を捉えることができる日常漫画は、1ページ漫画にも適しています。感動や共感を呼び起こす瞬間を描くことができます。
- ミニドラマ
小さなエピソードや人間関係の一端を描くことで、感動的なミニドラマを構築することができます。
- SF/ファンタジー
短いシナリオやコンセプトを通じて、SFやファンタジーの要素を取り入れた1ページ漫画も面白いアイデアが生まれます。
- 社会風刺
現代社会の問題や風刺を描くことで、社会的なメッセージを伝える1ページ漫画が制作できます。
- ホラー
緊張感や驚きを瞬時に伝えることができるため、短編のホラー漫画も人気があります。
1ページ漫画の作り方(実例アリ)
1ページ漫画の特徴がわかったところで、具体的な手順を見ていきましょう。1ページの漫画を作成する方法は様々ですが、以下は基本的な手順とポイントです。漫画制作においては、ストーリーボードの作成やキャラクターデザインなどが重要な要素となります。
アイデアの構築
まず、伝えたいメッセージやストーリーの要素を考え、それに基づいてアイデアを構築します。この段階ではノートに箇条書きをする程度で構いません。
具体的に描きたいものが決まっていない場合は、前述したおすすめジャンルをまず選び、そこからイメージを膨らませると良いかもしれません。
例えば、『日常』『ミニドラマ』系のジャンルをまず選び、自分がよく知っている設定の中から、感動できそうなシーンをピックアップします。「高校の卒業式」「別れの寂しさと、未来への希望」「青春のキラキラした感じ」など。3つくらいアイデアがあるといいですね。
キャラクターの設計
主要なキャラクターを設計し、外見や性格を決めます。これは読者がキャラクターに感情移入できるようにするために重要です。
『日常』『ミニドラマ』のように、多くの読者に共感をしてほしいのであれば、極力アイデンティティーを削ったキャラクターがおすすめです。見た目も性格もありふれたタイプにすると、多くの読者が感情移入がしやすいでしょう。
逆に特徴的なキャラクターを描くと、インパクトを与えることができます。『ギャグ』『シュールコメディ』『SF/ファンタジー』は、こちらの方が良いかもしれませんね。
私は今回登場人物を2人考えました。比較的よく見かけるルックスを意識しています。江藤くんの名前を先に決めて、出席番号順に隣になりそうな苗字を考えて、桜田さんに決まりました。
二次創作の場合は、この工程はほとんど不要です。
プロット(起承転結なんて考えなくてOK)
アイデアとキャラクターを元に、物語を考えます。 プロットや、ストーリーの作り方を調べると、「起承転結」や「三幕構成」などが出てきますが、1ページ漫画はそんなもの考えなくてOK!どうやったって1ページなので、描きたいものを描く、見せたいものを見せるに限ります。
この工程は実例があった方がわかりやすいと思うので、まずは私のメモをご覧ください。
アイデアとキャラクターを考えていく中で、既に私が1番描きたいシーンだけは決まっていました。それは、『桜田さんが何かを江藤くんに貸して「絶対返してよ(また会おうね)」と言う』シーンです。これに肉付けをしていきます。
ゴール
:桜田さんが何かを江藤くんに貸して「絶対返してよ(また会おうね)」と言う
・何かとは?
→隣の席だから、消しゴム?ペン?本?
・そもそも桜田さんと江藤くんはキャラは正反対なのになぜ仲良かったのか?
→共通の趣味があった
→隣の席だからそれに気づけた
→共通の趣味は読書にしよう!
・桜田さんは読書好きだけど陽キャ一軍所属であまり本の話しない
→休み時間に隣の席で好きな作家の本を読んでいる江藤くんに気づいた
→桜田さんから声をかけて少しずつ仲良くなったけどあまり周知されてない
→それでも桜田さんにとっては特別な友達だった
・卒業後離れる設定
→陽キャは地元進学のイメージ(偏見)
→江藤くんは県外に進学する
情報は結構出てきたので、この情報を散りばめながらストーリーにしていきます。
①卒業式終了後、陽キャグループではしゃぐ桜田とひとりで帰る江藤
卒業式の日であること、2人のキャラが正反対であることを表現
②桜田が江藤を追いかけて引き留める/少し話す
読書という共通の趣味があったこと、あまり周知されていなかったけど仲が良かったことを表現
③桜田が江藤の好きな本を貸して「絶対返してよ」
桜田にとって江藤が特別であったこと、これから頻繁には会えなくなること(別れの寂しさ)を表現
④桜田の思いにジョークで応える江藤
2人の仲の良さ、未来への希望を表現
このような感じ。一番描きたいものに向かって、「なぜ」そうなったのかを考える作業ですね。出来上がってしまえば、「起承転結」の構図になっているのですが、完全に結果論。描きたいシーンを魅力的に描くために情報を増やして繋げると、全く意識していなくても「起承転結」になっちゃう、という話です。
1番描きたいシーンがわからない場合は?
このプロットの組み立て方は、まず描きたいシーンがあって、そこに肉付けをしていく流れです。そもそも描きたいシーンがない場合はどうするのか、ということですが、ひとつ前の工程に戻ってください。キャラクターの設計がまだまだ甘い状況です。
ストーリーを作るには、キャラクターの名前や見た目は当然のこと、性格などのプロフィールは作りこむことが重要です。性格が細かく決められるほど、そのキャラクターの行動は制限されていきます。
例えば私のアイデアだと、「男女」というキャラクター情報だけでは、物語は何も生まれません。何も生まれないというか、無数に選択肢があって、選びきれないんです。ここに、陽キャ女子と陰キャ男子が足されたことにより、その「男女」の行動パターンが限定されていきます。
- 卒業式後、仲の良い陰キャと陽キャは写真とかは撮らないよなあ
- また遊ぼうねとかもなさそう
- 共通の趣味を餌に、遠回しにまた会おうの意を伝えたり?
- 陽キャ女子の方が思いが強いとかわいいな
- 物を貸して「返してよ」がかわいいかも!
という感じ。つまり、描きたいシーンが思いつかない場合は、キャラクターの作り込みが弱くて、そのキャラの行動パターンをイメージできていない状況だと言えるでしょう。今一度、前のステップに戻ってプロフィールを充実させてみてくださいね。
コマ割り
1ページの中でコマの配置を決めます。これが最難関だと思いますが、1ページ漫画の場合はテンプレートを使っちゃうのが早いと思います。
私はクリスタを使っているのですが、クリスタの漫画素材には様々なコマ割りパターンが用意されています。プロット作成時の「1番描きたいシーン」が所謂「魅せゴマ」「決めゴマ」になるので、そこが1番大きいコマになっていれば問題ありません。
私はこの後ネーム工程の後、再度コマ割りに戻ることが多いので、ここでは直感で選びます。
ネーム(再度コマ割り→完成ネーム)
ようやく絵を描く工程です!コマごとに何が起こるのかを描きます。簡単な絵とセリフの描いていきます。
第1ネームがこちら。適当なコマ割りテンプレートを使用しているので、「1番描きたいシーン」=「『絶対返してよ(また会おうね)』のシーン」が小さくなっていますね。
そしてプロットの段階では江藤くんのジョークで終わる予定でしたが、入りきれないので断念しました。
第1ネームを描きあげたら、ストーリーを改めて確認しながらコマの配置とサイズを考えます。
①卒業式終了後、陽キャグループではしゃぐ桜田とひとりで帰る江藤
卒業式の日であること、2人のキャラが正反対であることを表現
②桜田が江藤を追いかけて引き留める/少し話す
読書という共通の趣味があったこと、あまり周知されていなかったけど仲が良かったことを表現
③桜田が江藤の好きな本を貸して「絶対返してよ」
桜田にとって江藤が特別であったこと、これから頻繁には会えなくなること(別れの寂しさ)を表現
④桜田の思いに応える江藤
2人の未来への希望を表現
①の要素は2人の状況を説明するものなので必要不可欠ではありますが、重要度は低いので、小さめのコマでOK。②の要素では桜田さん(ヒロイン)をかわいく描きたいので大きめのコマ。本のコマや回想のコマはわかればいいので小さめのコマ。そして一番の魅せゴマは③、一番大きいコマにします。④も江藤くんを主人公として大きく切り取りたいので中くらいのコマにしたいですね。
それを踏まえてサイズを変更した第2ネームがこちら。
1ページ漫画にしてはコマ数が多めになってしまいましたが、だいぶ漫画っぽい雰囲気が出てきました。
テキストと吹き出し
ペン入れの前に各コマにセリフやキャプションを追加してストーリーを補完します。ペン入れ前にテキストと吹き出しを入れる理由は、吹き出しで隠れる部分の絵を描かないようにするためです。見えないところを描きこむ時間が減らしていきましょう。
下描き
キャラクターと背景のデザインを行います。キャラクターの表情やポーズ、背景の細部まで注意を払い、漫画全体の雰囲気を作り上げます。今回私はネームをしっかりめに描いた(つもり)ので、下書きの手順は省きました。
ペン入れ
下書きを元にペン入れしていきます。背景の空や植物は、トーンや花びらブラシなどでごまかす予定なので描いておりません(苦笑)1コマ目は桜が満開であることを見せるために、最後の2コマはドラマチックさを少しでも足すために、裁ち切り線までコマを広げました。
回想のコマはネームから構図が結構変わりました。当初は隣の席という設定でしたが前後の席になりましたね、、、。構図を変えた理由は、漫画の全体を見た時に、1コマ目のアオリの遠景以外はほとんどが真横からのカメラアングルで、画面がつまらないと思ったからです。回想をフカンのアングルにしたときに、二人の表情や中の良さがわかる構図がいいなと思い、前の席の桜田さんが椅子を後ろに向けて話すシーンに変更しました。
セリフも若干変わっています。
ベタ
黒ベタをバケツツールや投げなわ塗りツールで塗っていきます。私はこの段階で背景の空や植物も先に入れました。最後のコマは、未来への希望を表すコマなので、江藤くんの頭のベタを削り、少し軽い印象にしました。
固有色、影、仕上げ
黒ベタ以外の固有色、影を入れて仕上げます。回想のコマにはボーダー線のトーンを足したり、魅せゴマの背景はぼかして遠近感を出したりしました。ということで完成です!!!
ちなみに本のタイトルはギリギリまで『さよならは言わない。』にしていたのですが、さすがに安直か?と思い最後の最後に変更。『ダイヤモンドリリー』の花言葉は、「また会う日を楽しみに」です。誰が気づくねんだけどえも~!!!!
まとめ:1ページ漫画は誰でも描ける
いかがでしたでしょうか。私も実際漫画を描きだしたばかりではありますが、自分でpixivにあげたりXにあげたりする分には問題ないクオリティではないでしょうか?
自分の制作物を公開したり、保存しておくことで将来の参照や進化に役立てることができます。これは一般的な手順ですが、漫画の作成はアーティストのスタイルやストーリーの要素によって異なります。自分なりのスタイルやアプローチを見つけて、楽しんで漫画制作を進めていってくださいね。
質問などもお待ちしています!